天才感染症(上巻)のあらすじとレビュー/感想

本屋に平積みされていた本で目に入ったのがSF小説の『天才感染症』。なんかタイトルからして面白そう(原題は『The Genius Plague』)と思って調べたら、2018年8月現在はkindle unlimitedにもありました。まだ上巻を読み終わった所ですが、ここ数年で読んだ中で一番面い小説です。『天才感染症』はSF小説に分類されますが、舞台設定は通常の現代(日産、エドワード・スノーデン、アルゴ(映画)などの単語も出てくる)なのでSF小説が苦手という人でも読みやすいでしょう。

『天才感染症』は、アメリカ人の菌類学者ポールがアマゾンのジャングルで菌類のサンプルを採取して、船に乗るところから始まります。『天才感染症』上巻の前半は登場人物が少なく、場面転換も少ないので、翻訳小説にありがちな、名前が覚えられず「これ誰だっけ?」というのが無く、読みやすいです。翻訳もいいです。

以下『天才感染症』のあらすじです。

菌類学者のポールは船着き場で知り合ったアメリカ人女性と船に乗るが、テロリストに襲撃され訳も分からず泳いで逃げる。アメリカに帰ってきたポールは吐血し、女性は死亡してしまう。しかし、回復したポールは知能が向上していた。

一方、ポールの弟のニールはアメリカでNSA(アメリカ国家安全保障局)に入るための面接を受けるところだった。ニールは数学と暗号解読が得意な天才だが大学中退で学位を持っていない。

NSAに入ったニールは、他の部署が諦めた解読不能な暗号を解読する部署に配属される。そして南米で反政府ゲリラや麻薬組織が、特殊な言語で通信していることに気づく。

ブラジルで高まる反米感情、敵対していた麻薬組織や反政府ゲリラの協調、アメリカで広まる頭が良くなるスマートドラッグ。ニールの暗号解読、ポールの異変、それらが結びついて…というあらすじです。

前半は、元NSA職員の父親のアルツハイマーの症状、NSAの面接と試験、NSAのオリエンテーションでのハッキングの課題などについて描かれます。特に前半で面白かったのはNSA内部の描写です。実際のNSAとは違うと思いますが、他の人(ダン・ブラウンとか)が描くNSAよりもなんかそれっぽいです。ちなみに、著者のデイヴィット・ウォルトンはロッキード・マーティンで働いていたようです。

また、キノコや暗号に関する蘊蓄、アメリカのドラマ『SUITS/スーツ』の主人公の様に閃きやソーシャルエンジニアリングを駆使して、周囲のライバルとは違ったアプローチでNSAの課題を突破するニールも良いです。

最近腸内細菌についてずっと調べたり考えたりしていたので、『天才感染症』は非常に面白く読めました。以下は『天才感染症』上巻で気になった部分の引用です。

「それは違うでしょう。菌は自分の行為を自覚する必要はありません。知性も必要ない」ぼくは答えた。「ただひたすら進化のプログラムに従っているだけなのかもしれません。菌が人間を宿主にしたとして、その人間が菌にとって有利になるか、不利になるかする意図を持った場合、菌がそれに対する反応としてセロトニンの分泌を調整したとしたらどうなると思います? その人間はその意図にもとづく行動に前向きになったり、うしろ向きになったりするわけです。この方法なら、菌自体に高度な知性がなくとも、人間に影響を及ぼすことは可能だ。もっとも、すべてはただの推測ですが」

『天才感染症』上巻は一気に読めて面白かったです。気になっている人はとりあえず上巻だけでも読んでみると良いでしょう。知性が高くなった人類との戦いという点で高野和明『ジェノサイド 上 (角川文庫)』に似てる感じがします。

天才感染症 上 (竹書房文庫)
天才感染症 上 (竹書房文庫)

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