平岡陽明 ロス男の感想

『ロス男』は『古今東西名言集1000』という本のために、名言をピックアップする仕事を依頼されたフリーライターの吉井が

「みじめな気持ちになる秘訣は、自分が幸福かどうか考える時間を持つことだ」

というジョージ・バーナード・ショーの名言を図書館で見つける所からスタートします。

『ロス男』は40歳のフリーランスのライターが、周りの人と関わることによって「人生を再起動させる」という連作短編集です。僕もいわゆるロスジェネ世代です。生まれた時代が「ハズレ」で就職難のまま、正社員になれずにそのまま中年になってしまった人が多い世代です。僕なんかロスジェネ世代じゃなかったとしても会社員には向いていなかったと思いますが。

生活がどれだけ苦しいか?というような描写は全くといっていいほど出てきません。ラストの方でキャッシングの経験談がちょっと出てくるだけなので、SPA!的な記事みたいなやつは期待しない方が良いです。

ロスジェネが20代くらいだった90年代に流行した「自分探し」は、「旅に出たりして自分が本当に求めている物を探す」みたいな感じだったと思います。適当な定義ですが。

『ロス男』の場合は、「本当の自分の人生を起動したい」というような言葉が地の文に何回も出てきます。でも、自分から積極的に動くというよりも、周囲の人間に誘われて動くというかなり消極的な感じです。たとえば、契約社員だった時の同僚で60代の「カンちゃん」や、アスペルガーの漫画家、大学時代の友人のヤクザライター、コスパ重視の15歳なんかと関わってちょっとずつ変わっていきます。その関わり方が全て成り行きなのです。

主人公の吉井は、相続した平屋を持っているので家賃はかかっていません。「金融資本」は無くてもよく飲み歩いているし、そんなに貧乏っていう感じでもなく、色々と知り合いも多く「社会資本」はあるのです。だから、そんなに人生に絶望しているというわけでもなく、漠然と「本当の自分の人生を起動したい」と思っています。

そんなわけで、僕の様に「社会資本」がほとんど無い人にはあんまり響かないと思います。

第二話に出てくるアスペルガーのマンガ家のお母さんの遺言の一節に

「一人が苦にならないあなたの性格こそ、神様がくれた最高のプレゼントじゃないかしらって。」

というのがあって、やっぱり「配れたカード」で戦うしかないよなと思いました。

『ロス男』は「人生を強制終了させる」ほどじゃないけれどちょっと悩んでいる、自分の人生に違和感を感じるくらいの人におすすめです。自己啓発書を読んだ後みたいに、ちょっと新しいことやってみようかなと思うかもしれません。

ロス男


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